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職場で断絶する世代の感覚

 

少子高齢化が進み、年々新規学卒者の採用が難しくなる一方で、せっかく採用しても職場に定着しないという離職率の高さが問題になっています。現場の上司や先輩からは「今の若いもんは根性がない」、あるいは「新規採用者にどう接していいのかわからない」という声が聞かれます。今回はまず、経営者や工場長、店長クラスの世代、すなわち50代から60代前半の感覚と20代から30代の若手社員の感覚の違いについてお話しします。

1.「旧人類」と調和する「新人類」

 

皆さんは「新人類」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?1980年代に使われるようになった新語で、当時の若者を「従来とは異なった感性や価値観、行動規範を持っている」という意味で表現したものです。具体的なイメージで言えば、「インベーダーゲーム」や「共通一次試験」という社会現象を背景に持つ世代です。ちなみに私も1981年に大学に入学した世代ですので、まさに「新人類」。入学当時は教官や先輩たちから「お前たちは共通一次世代だから」と、何やら理解できないもののように言われてきた経験があります。

 

ところが大学を卒業し、いざ社会に出てみると、上司・先輩はほぼ旧世代。高度経済成長を支えてきた自負を持ち、切磋琢磨・競争社会を生き抜いてきたツワモノたちでした。

 

私たち「新人類」はこうした「旧人類」に一部批判的な考えを持ちながらも、ある程度妥協して、バブル経済のさなか企業戦士として働いてきたのです。このころのリゲインというドリンク剤のCMで「24時間戦えますか!?」というキャッチコピーがありましたが、まさに旧人類と調和しながら、24時間戦うことがカッコいいと思っていた新人類を象徴するキャッチコピーといえるでしょう。

 

 

ところがバブル経済の崩壊で「日本経済は成長を続ける」という精神的な支柱は崩れ、あとには「疲れ」だけが残るようになりました。このころ、同じドリンク剤のCMは変化し、「24時間戦えますか!?」という勇ましいものから、「その疲れに、リゲインを」「たまった疲れに」など、癒し系のキャッチコピーが目に付くようになりました。

 

その後、日本経済が回復してきた2006年ごろから、CMのキャッチコピーも一時「24時間戦えますか」が回復。しかしその直後に世界を襲ったリーマンショックもあって栄養ドリンク市場の縮小傾向は止まらず、ピーク時に比べて、2016年度は3割以上も減ってしまったのです。

 

  2.「超人類」の登場

 

こうした社会の流れの中で、新たに登場してきた若者たちを、私は「超人類」と呼んでいます。すなわち「新人類」の息子や娘たちの世代です。企業の中では20代から30代の若手社員の世代がそうです。彼らの親である「新人類」は、上司や先輩である「旧人類」と調和しつつも新しい価値観で家族に接してきました。その結果、子供たちである「超人類」はごく自然に新しい価値観の中で育ち、またそれを当然のこととして受け止めているのです。

 

彼らの特徴は「無理をしないこと」。よく言えば「穏やか」ですし、ちょっと皮肉を込めて言えば「マイペース」。もっと厳しい見方では「自己チュー(自己中心)」ともいわれることが多い世代です。例えば彼ら「超人類」は、企業の中ではアフターファイブのお付き合いは最低限に済ませます。上司に飲みに誘われても「ごく自然に」断りますし、社員旅行などはもちろん「不参加」。社内の団体行事が成り立たなくなったという声が聞かれるようになってずいぶん経ちます。こうした世代が社会人としてデビューしていく中で栄養ドリンクも販売戦略の見直しを迫られ、ついには24時間どころか「3,4時間戦えますか?」になってしまいました。

 

 

さて、次回はこうして登場した「超人類」の特徴を深掘りしてみます。